2人でかわいい猫ををつくろう。
学園祭や商店街のお祭りで飾るような、大きなハリボテを。
君はかわいいものが好きだから。
君は猫が好きだから。
骨組みをしっかり作らなきゃ。
愛くるしい形にしたいよね。
紙をきれいに張らなくちゃ。
よぼよぼの年老いた猫も味があるけど、
やっぱり子猫がたまらない。
せっせ。せっせ。
大変だけど、楽しいね。
形ができあがった。
うんうん。とてもとても、いい出来だ。
君も僕も、満足だ。
さあ、次はいよいよ色塗りだ。
僕はペタペタ黒を塗る。
ジジのような黒猫になっちゃうな。
ジジ、かわいいからきっと君も気に入るよ。
僕はペタペタ黒を塗る。
おや?君の声が聞こえない。
ペンキを塗る手を止めて、君の方をのぞいてみた。
「なんで黒猫なの。気持ち悪いよ。・・・・怖い。」
ドキッとした。
僕は、どうしていいのか分からなかった。
君が気に入ると思っていたから。
そんなにも黒猫がイヤだったなんて、
僕は思いもしなかったんだ。
「今からでもまだ遅くはないよ、白く塗り替えよう。」
あわてて僕はそう言った。
でも、怒った君には届かなかった。
「何で黒猫なの!」
君は、子猫をギッタギタに引き裂いた。
それはもう、とても猫とは呼べないくらいまでに。
とても「かわいい」だなんて言えないほどまでに。
そして君は、ボロボロになった僕と子猫を置いて去っていったよ。
黒で塗った僕がバカだったのは、今なら分かる。
たとえ白く塗り替えても、一度黒く塗ってしまっていたから、
キレイな白にはならないことも分かっていたんだ。
勝手な事を言うようだけど、
それでも僕はもう一度、一緒に白く塗ってほしかった。
黒で塗った僕をののしってもいい。
いくら呆れてもいい。
なんなら、協力するふりだけでもいい。
「あの時はバカだったねー。何で黒で塗りだしたのさー。
おかげでこんなに濁った白猫になっちゃったよ。」
後からそう笑えるように。
でも、この場に君はもういない。
僕は、残された子猫の死体とともに、いつまでも立ち尽くしているよ。