車という名の別荘へ行く。
こんなに狭いけど、とても贅沢な部屋なんです。
CDをかければ、ここはたちまちコンサートホール。
ドームよりもオペラハウスよりも
きれいに聴こえる音響。
流れ行く景色はまるで映画のよう。
目の前に映る景色は時速60キロで過ぎていく。
どこにもない、僕だけのためのシアターだ。
主題歌は、僕の今一番聴きたい曲。
自分の好きな曲ばかりを演奏してくれるよ。
いろいろ考えたい時は、静かにしてよう。
大好きな曲を、じっくり聴こう。
歌いたいときは、精いっぱいの声で叫べばいい。
カラオケじゃないから、
間違って歌おうが声が出ていなかろうが、
まったく気を使う必要がないんだよ。
目的地なんてなくていい。
ただ乗って、
音楽を聴いて、歌うんだ。
自分のワガママで
無理やり相手を責めたこと。
どうあっても価値観が合わなかったこと。
自分なりに、精いっぱいだったこと。
いろいろな思いが交錯する中、
車は走る。
僕だけのスウィートルームだよ。